東京高等裁判所 平成9年(の)1号 判決 1997年12月24日
主文
一 被告会社株式会社金門製作所及び同愛知時計電機株式会社をいずれも罰金九〇〇万円に、同タマガワ株式会社、同東京水力器機株式会社、同東洋計器株式会社、同日本計器工業株式会社、同仲子計量器株式会社、同株式会社東京量水器工業所、同リコー精器株式会社、同横尾計器株式会社、同大阪機工株式会社、同明治時計株式会社、同横浜水道機材株式会社、同東光精機株式会社、同日東メーター株式会社、同富士水道工業株式会社、同株式会社水戸量水器工作所、同株式会社阪神計器製作所、同日東精工株式会社、同株式会社吾妻計器製作所、同日国工業株式会社、同谷商株式会社、同株式会社三龍社及び同長野県度量衡株式会社をいずれも罰金六〇〇万円に、同株式会社高畑工業を罰金五〇〇万円に処する。
二 被告人A2、同A3、同B1及び同B3をいずれも懲役九月に、同A1及び同B2をいずれも懲役八月に、同C1、同D1、同E2、同F1、同G1、同H1、同I1、同J1、同K1、同L1、同M1、同N1、同O1、同P1、同Q1、同R1、同S1、同T1、同U1、同V1、同W1、同X1及び同Y1をいずれも懲役七月に、同E1、同I2、同L2、同N2及び同S2をいずれも懲役六月に処する。
右被告人三四名に対し、この裁判の確定した日からいずれも二年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社株式会社金門製作所、同愛知時計電機株式会社、同タマガワ株式会社、同東京水力器機株式会社、同東洋計器株式会社、同日本計器工業株式会社、同仲子計量器株式会社、同株式会社東京量水器工業所、同リコー精器株式会社、同横尾計器株式会社、同大阪機工株式会社、同明治時計株式会社、同横浜水道機材株式会社、同東光精機株式会社、同日東メーター株式会社、同富士水道工業株式会社、同株式会社水戸量水器工作所、同株式会社阪神計器製作所、同日東精工株式会社、同株式会社吾妻計器製作所、同日国工業株式会社、同谷商株式会社、同株式会社三龍社、同長野県度量衡株式会社及び同株式会社高畑工業(以下、いずれも株式会社を略した社名で記す)は、いずれも東京都が発注する水道メーターの販売等の事業を営んでいた事業者であって、東京都が選定した指名業者又は指名業者の代理人(代理人は、被告会社リコー精器、同谷商及び同高畑工業の三社)であり、被告人A1は、実質的に平成六年五月二日まで金門製作所水機器事業部水機器営業部第一課長、同A2は、実質的に同月六日以降同課長、同A3は、同課係長、同B1は、実質的に平成七年四月一九日まで愛知時計電機東京支店水道官需販売課長、同B2は、実質的に同月二〇日以降同課長、同B3は、同課係員、同C1は、タマガワ取締役営業部長、同D1は、東京水力器機営業部長、同E1は、実質的に平成七年一月三日まで東洋計器営業本部東京支店次長、同E2は、平成六年四月一日以降同支店主任、同F1は、日本計器工業取締役、同G1は、仲子計量器営業部長、同H1は、平成七年八月三一日まで東京量水器工業所管理部長、同年九月一日以降同社管理部長兼工場長、同I1は、平成八年三月三一日までリコー精器東京支店販売課長、同I2は、同年四月一日以降同課長、同J1は、横尾計器代表取締役専務、同K1は、平成六年六月三〇日まで大阪機工東京支店計器営業課長、同年七月一日以降同社営業本部第三営業部東京計器営業課長、同L1は、平成七年五月三一日まで明治時計東京支店長、L2は、同年六月一日以降同支店営業課長代理、同M1は、横浜水道機材代表取締役社長、同N1は、同年六月三〇日まで東光精機東京支社次長、同N2は、同支社営業課課長、同O1は、同年五月二八日まで日東メーター東京支店長、同月二九日以降同社取締役東京支店長、同P1は、富士水道工業総務部長、同Q1は、水戸量水器工作所次長、同R1は、阪神計器製作所東京支店長、同S1は、同年一〇月一九日まで日東精工制御システム事業部販売部東京販売課東京販売係主査、同S2は、同年四月一日以降同課東京販売係係員、同T1は、吾妻計器製作所常務取締役、同U1は、平成六年四月一五日まで日国工業東京支店長代理、同月一六日以降同支店長、同V1は、谷商第一営業部係長、同W1は、三龍社東京営業所長、同X1は、長野県度量衡営業部営業係長、同Y1は、高畑工業営業部営業三課主任の地位にあり、いずれも、それぞれの被告会社における右水道メーターの受注等の業務に従事する営業実務責任者であったが、以下の犯行に及んだ。
第一 被告人A1、同A3、同B1、同B3、同C1、同E1、同F1、同G1、同H1、同I1、同J1、同K1、同L1、同N1、同O1、同P1、同Q1、同R1、同S1、同T1、同U1、同V1、同W1、同X1及び同Y1は、平成六年四月一五日東京都千代田区麹町三丁目三番地六食糧会館において開催された会合に自ら出席し、被告人D1及び同M1は、いずれも自らの代理人である自社従業者と共謀してこれを右会合に出席させた上、東京都が平成六年度から水道メーターの発注を全面的に指名競争入札及び指名見積合わせ(以下、「指名競争入札等」という)の方法によることとしたことに対応してこれまでの各社の利益を維持するための受注調整を行うこととし、それぞれ自社の業務に関し、平成元年度から四年度までの受注実績を基に算出した比率を基準として平成六年度において各社が受注することを合意するとともに、これを実施するため、あらかじめ選出した幹事が入札の都度各社に受注予定社と入札予定価格を連絡してそのとおりに受注できるように各社が入札又は見積りを行うことを合意し、もって、被告会社らが共同して、平成六年度に東京都が指名競争入札等の方法により発注する水道メーターの受注に関し、被告会社らの事業活動を相互に拘束することにより、公共の利益に反して、右水道メーターの受注に係る取引分野における競争を実質的に制限した。
第二 被告人A2、同A3、同B1、同B3、同C1、同E2、同F1、同H1、同J1、同K1、同N1、同O1、同P1、同Q1、同R1、同S1、同T1、同U1、同V1、同W1、同X1及び同Y1は、平成七年四月一二日東京都中央区京橋一丁目五番一五号巴川製紙ビルにおいて開催された会合に自ら出席し、被告人D1、同G1、同I1、同L1、及び同M1は、いずれも自らの代理人である自社従業者と共謀してこれを右会合に出席させた上、それぞれ自社の業務に関し、平成七年度に東京都が指名競争入札等の方法により発注する水道メーターについて、平成六年度に定めた各社が受注すべき比率を基本として受注することを合意するとともに、あらかじめ選出した幹事が入札の都度各社に受注予定社と入札予定価格を連絡してそのとおりに受注できるように各社が入札又は見積りを行うことを合意し、もって、被告会社らが共同して、平成七年度に東京都が指名競争入札等の方法により発注する水道メーターの受注に関し、被告会社らの事業活動を相互に拘束することにより、公共の利益に反して、右水道メーターの受注に係る取引分野における競争を実質的に制限した。
第三 被告人A2、同A3、同B2、同B3、同C1、同E2、同F1、同G1、同H1、同I2、同J1、同L2、同N2、同O1、同P1、同R1、同S2、同T1、同U1、同V1、同W1、同X1及び同Y1は、平成八年四月一一日東京都武蔵野市吉祥寺南町一丁目六番三号株式会社関東東急イン吉祥寺東急インにおいて開催された会合に自ら出席し、被告人D1、同K1及び同Q1は、いずれも自らの代理人である自社従業者と共謀してこれを右会合に出席させ、被告人M1は、事前に電話連絡により右会合の合意内容に従う旨を被告人B3に表明した上、それぞれ自社の業務に関し、平成八年度に東京都が指名競争入札等の方法により発注する水道メーターについて、平成七年度に定めた各社が受注すべき比率を基本として受注することを合意するとともに、指名業者の変更が予想されたことから、同比率をあらかじめ定めた算定方法及びあらかじめ選出した幹事の判断によって適宜変更することを合意し、さらに、これを実施するため、同幹事が入札の都度各社に受注予定社と入札予定価格を連絡してそのとおりに受注できるように各社が入札又は見積りを行うことを合意し、もって、被告会社らが共同して、平成八年度に東京都が指名競争入札等の方法により発注する水道メーターの受注に関し、被告会社らの事業活動を相互に拘束することにより、公共の利益に反して、右水道メーターの受注に係る取引分野における競争を実質的に制限した。
(証拠の標目)<省略>
(法令の適用)
(判示第一及び第二の事実に関して適用する刑法は、平成七年法律第九一号による改正前のものをいう。)
一 被告会社二五社の判示第一ないし第三の各所為は、いずれも私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下、「独占禁止法」という)九五条一項一号、八九条一項一号、三条に該当するが、以上はいずれも刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合計額の範囲内で、各被告会社を主文一記載のとおりの罰金刑に処することとする。
二 被告人A1、同A3、同B1、同B3、同C1、同D1、同E1、同F1、同G1、同H1、同I1、同J1、同K1、同L1、同M1、同N1、同O1、同P1、同Q1、同R1、同S1、同T1、同U1、同V1、同W1、同X1及び同Y1の判示第一の各所為、被告人A2、同A3、同B1、同B3、同C1、同D1、同E2、同F1、同G1、同H1、同I1、同J1、同K1、同L1、同M1、同N1、同O1、同P1、同Q1、同R1、同S1、同T1、同U1、同V1、同W1、同X1及び同Y1の判示第二の各所為並びに被告人A2、同A3、同B2、同B3、同C1、同D1、同E2、同F1、同G1、同H1、同I2、同J1、同K1、同L2、同M1、同N2、同O1、同P1、同Q1、同R1、同S2、同T1、同U1、同V1、同W1、同X1及び同Y1の判示第三の各所為は、いずれも独占禁止法九五条一項一号、八九条一項一号、三条(被告人D1の判示第一ないし第三、同G1の判示第二、同I1の判示第二、同K1の判示第三、同L1の判示第二、同M1の判示第一、第二及び同Q1の判示第三の各所為については、更に刑法六〇条)にそれぞれ該当するところ、各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、被告人A2、同A3、同B1、同B3、同C1、同D1、同E2、同F1、同G1、同H1、同I1、同J1、同K1、同L1、同M1、同N1、同O1、同P1、同Q1、同R1、同S1、同T1、同U1、同V1、同W1、同X1及び同Y1については、以上はいずれも刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により、被告人B1、同I1、同L1、同N1及び同S1については犯情の重い判示第二の罪の刑に、被告人A3、同B3、同C1、同D1、同F1、同G1、同H1、同J1、同K1、同M1、同O1、同P1、同Q1、同R1、同T1、同U1、同V1、同W1、同X1及び同Y1については犯情のもっとも重い判示第三の罪の刑に、被告人A2及び同E2については犯情の重い判示第三の罪の刑にそれぞれ法定の加重をし、その刑期ないし所定刑期の範囲内で、各被告人を主文二記載のとおりの刑に処し、情状により、被告人三四名に対し、同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日からいずれも二年間その刑の執行を猶予することとする。
(弁護人の主張に対する判断)
一 構成要件該当性及び罪数に関する主張について
1 主張の要点
一部の弁護人は、本件行為の構成要件該当性及び罪数に関し、次のとおり主張している。
(一) 独占禁止法八九条一項一号が定める不当な取引制限の罪は、一定の取引分野における競争を実質的に制限した場合に成立するところ(同法二条六項)、本件における一定の取引分野は「東京都が指名競争入札等の方法により発注する水道メーターの受注」という各年度を通じた一体のものであって、年度毎の別個のものではなく、かつ、平成六年度の受注についての取引制限行為により競争の実質的制限が生じて、平成七年度及び八年度にもその効果が持続したのであるから、両年度において外形的にみれば別個の取引制限行為にあたる行為があったとしても、単なる確認行為であって、それにより新たな法益を侵害することはないので、不可罰的事後行為として別個の罪は成立しない(愛知時計電機、リコー精器関係)。
(二) 仮に平成六年度から八年度までの各年度毎に罪が成立するとしても、それらは併合罪ではなく、包括一罪又は単純一罪である(愛知時計電機、リコー精器関係)。
(三) 本件公訴事実は、各被告会社の営業実務責任者が受注調整についての基本ルールを談合したことを訴因として掲げているにとどまるが、その基本ルールを定めただけでは相互拘束性が十分ではなく、その後に受注予定社が決定して初めて相互拘束性が生じたのであるから、本件については独占禁止法八九条一項一号の既遂罪は成立せず、同条二項の未遂罪が成立するにとどまる(愛知時計電機関係)。
これらの主張に対して判断をするには、前提として、不当な取引制限の罪の解釈及び本件の事実関係を明らかにする必要がある。
2 不当な取引制限の罪の解釈
独占禁止法八九条一項一号の不当な取引制限の罪は、事業者が他の事業者と共同して相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することを処罰の対象とし(同法二条六項)、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる事業活動の相互拘束行為とその遂行行為とを共に実行行為と定めている。また、その罪は、明らかに自由競争経済秩序を維持することを保護法益としている(最高裁昭和五九年二月二四日判決・刑集三八巻四号一二八七頁参照)。さらに、事業者が不当な取引制限行為をした場合に課する課徴金は、原則として、その行為の実行としての事業活動を行った日からその行為の実行としての事業活動がなくなるまでの期間を基礎としてこれを算定するものと定められている(同法七条の二第一項)。
これらのことからすると、その罪は、右のような相互拘束行為等が行われて競争が実質的に制限されることにより既遂となるが、その時点では終了せず、競争が実質的に制限されているという行為の結果が消滅するまでは継続して成立し、その間にさらに当初の相互拘束行為等を遂行、維持又は強化するために相互拘束行為等が行われたときは、その罪の実行行為の一部となるものと解するのが相当である(東京高裁平成八年五月三一日判決・高刑集四九巻二号三二〇頁は、これと同旨と解せられる)。
また、別の相互拘束行為等が行われた場合において、新たな罪が成立するか、なお従来の罪が継続しているかは、その行為によって競争を実質的に制限する新たな事態が生じたか、それとも、従前の行為によって生じている競争を実質的に制限する効果を維持するなどの効果を持つにとどまるかにより判断するのが相当である。
3 事実関係
(一) まず、東京都の水道メーターの発注方法をみると、平成五年に一部修正するまでは、永年にわたり、水道メーターを買入れる契約は「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」(地方自治法施行令一六七条の二第一項二号)であるという判断に立って、すべての口径のメーターについて随意契約の方法によっていた。ただ、昭和四八年から順次、単価同調方式と呼ばれる特殊な随意契約の実施方法を採ることとした。これは、各年度の初めに、メーターの口径等の別毎に入札と同様の方法で指名業者又はその代理人(以下、これらを指名業者等という)に見積価格を入札させた上、東京都の予定単価内で最低価格を入札した業者及びその単価で受注することに同意した業者と東京都の間で、その単価で納入をする旨の年間単価契約を締結し、必要の都度随意契約によりそれらの業者からメーターを納入させるというものであった。そして、年間発注総量の八五パーセントは各業者の前年度の受注実績等に応じて割り当てるが、一五パーセントは最低価格を入札した単一又は複数の業者にプレミアムとして割り当てていた。
平成五年度になり、東京都は、右の方式を一部修正した。それは、平成三年一二月、まだ指名業者の代理人になっていなかった高畑工業を除く被告会社二四社が談合して入札する際の最低価格とこの単価を入札する業者とを決定して受注調整をしていたことが公正取引委員会に発覚し、平成五年一月二九日、同委員会から勧告審決を受けるに至ったため、公正取引委員会や自治省の指導もあり、談合を防止して指名業者等の自由競争を促進する方向で発注方法を変更する必要に迫られたからであった。しかし、抜本的な変更は時間的に無理であるとの判断から、とりあえず、総発注金額の約九割を占める小口径メーター(一三ミリメートル、二〇ミリメートル及び二五ミリメートルのもの。これらを三小口径メーターと呼んでいる)については、単価同調方式自体は維持しつつも、プレミアムを二〇パーセントに拡大するとともに、最低価格を入札した業者が三業者以上あった場合には、くじ引きで二業者のみにプレミアムを均等に割り当てるなどの修正を加え、それ以上の中大口径メーターについては、指名競争入札又は指名見積合わせ(一定金額内の契約であることから特に随意契約が許される場合において、指名競争入札と同様の方法で入札させた上で随意契約を結ぶ方法)の方法に変え、競争を促進することとした。
平成六年度になり、東京都は、すべてのメーターについて指名競争入札又は指名見積合わせを採用することとした。ただ、中小業者を含む多数の業者に受注の機会を与えるため、三小口径メーターの指名競争入札等にあたっては、新品のメーターと修理品のメーター(外側のケースを洗浄して再利用し、中身を新しいものと交換したメーターをこう呼んでいる)の別に指名業者等を受注実績等を基準としてABCの三つのランクに分け、各ランク毎の発注量を各ランクに属する業者の平成四年度の納入実績に基づいて決定することとし、指名競争入札を年間一一回とし、三小口径については業者の三つのランク別に入札を行い、同じランクの同一口径についても数案件に分けて実施することとした。
平成七年度には発注方法を変更しなかったが、平成八年度になると、三小口径メーターの新品に一業者、修理品に五業者が新たな指名業者等として参入したことから、そのメーターの指名業者等のランクを見直すとともに、修理品のランクにC’を加えた。
(二) 次に指名業者等の対応をみると、単価同調方式の下では、最低入札価格の単価で前年度の納入実績等に応じた数量を受注できるところから、指名業者等の主な関心は、その単価を東京都の予定価格の近くに維持することに向くことになる。そのため、前記被告会社二四社の営業実務責任者は、かねてから新品業者で結成していた土曜会や修理品業者で結成していた東水会の会合で単価入札における最低単価を合意するとともに、プレミアムを受けることになる最低価格入札社を合意し、これに基づいて入札して受注価格の低落を防止していた。平成二年度及び三年度にも同様の談合を行ったが、前記のとおりこれが公正取引委員会の知るところとなり、平成三年一二月一二日以降被告会社二四社への立入検査が行われるに至ったため、平成四年二月に東水会、三月に土曜会を名目上解散した。しかし、実際には同様のメンバーで会合を続け、平成四年度においても、その年度から指名業者の代理人となった高畑工業を含む二五社の営業実務責任者で従前同様の談合をして各被告会社はこれに従った。
平成五年度においては、東京都から前記のとおり発注方法の変更が示されたところから、対応を協議し、単価同調方式が維持された三小口径メーターについては、基本的には従前どおりの対応をするが、プレミアムを受けることになる業者を新品メーターでは主として金門製作所及び愛知時計電機とし、修理品メーターでは最終的に東京都が行うくじ引きの結果に委ねることで合意し、指名競争入札等によることになった中大口径メーターについては、金門製作所及び愛知時計電機の担当者が幹事となって受注予定価格と受注予定社を決定することを合意し、各被告会社は右の談合の結果に従った。
平成六年度においては、すべての口径メーターについて指名競争入札等の方法が採用されることが予想されていたため、平成五年秋ころから一部被告会社の営業実務責任者を中心に協議を重ね、これまでの受注実績を尊重した受注調整を行うことでは基本的な意見の一致をみたが、平成六年四月に東京都から前記のとおりの新しい発注方法が示されたところから、同月一五日に改めて協議した結果、平成元年度から四年度までの受注実績を基本として各被告会社の受注割合を決めること、一年を通じた調整を続けてこの目標を達成するため、幹事が入札期日毎に受注予定価格と受注予定社とを決定して各被告会社がこれに従うことなどを合意し、以後各被告会社はその談合の結果に従った。
平成七年度においては、東京都の発注方法の変更は予定されていなかったが、被告会社二五社の平成六年度の合意がその年度の新しい発注方法に対応する新しい方法を内容とするものであり、かつ、一年間をかけて達成するというものであったところから、平成七年度においても六年度の結果を検討して問題点を探り、受注調整を続けるか否か、続ける場合にその方法をどうするかについて改めて合意をする必要があったため、平成七年四月一二日に各被告会社が会合を開き、前年度末の受注調整の未精算額一覧表を回覧するなどした上、前年度と同様の方法で受注調整を続け、前年度に決めた各被告会社の受注割合を維持すること、その実現と前年度末の未精算額の精算を一年間かけて行うことを合意し、以後各被告会社はこの談合の結果に従った。
平成八年度においては、新たに数社が指名業者等として参入することなど新しい事態も予想された上、前年度の合意が一年間を通じて調整を行うという内容であったところから、改めて協議し、平成八年度においても受注調整を行うか否か、行う場合にその方法をどうするかについて改めて合意をする必要があったため、事前に合意内容に従う旨を表明していた横浜水道機材を除く各被告会社が平成八年四月一一日に会合を開き、前年度末の受注調整を未精算額一覧表を回覧するなどした上、前年度と同様の方法で受注調整を続け、前年度に決めた各被告会社の受注割合を維持すること、その実現と前年度末の未精算額の精算を一年間かけて行うこと、新規参入業者があった場合にはその時点でその受注比率を算出して各被告会社が受注比率に応じてこれを負担することなどを合意し、以後各被告会社はこの談合の結果に従っていたが、同年七月一一日に公正取引委員会の立入検査を受けたため、談合の結果を実施することを断念した。以後、水道メーターの落札価格は、東京都の予定価格を大幅に下回ることになった。
4 主張に対する判断
(一) まず、平成六年度における談合によって七年度及び八年度における談合の内容についても基本的なルールは決定されていたから、両年度における談合は別個の罪にはならず、不可罰的事後行為として無罪であるとの主張に対して判断する。
平成六年度における談合によって三箇年度分の取引制限の効果が生じたとの所論を前提としても、2で判示したとおり、不当な取引制限の罪は、三箇年度の談合を含む全体が継続犯として一罪を構成するにとどまり、平成七年度及び八年度の合意が不可罰的事後行為として罪にならないわけではないから、所論は理由がないことになる。
(二) 次に、平成六年度、七年度及び八年度の談合は全体として一罪を構成するにとどまるとの主張に対して判断する。
平成七年度及び八年度の談合について六年度の談合とは別個の罪が成立するか否かは、2で判示したとおり、両年度の談合によって新たに競争を制限する結果が生じたか、それとも、六年度の談合によって生じている競争を制限する結果を確認又は強化したにとどまるのかにより判断するのが相当である。
そこで、3で認定した事実関係を基礎として検討すると、平成六年度においては、東京都が永年にわたる随意契約及び単価同調方式を改めて全面的に指名競争入札等の方法を採用したため、これに対応して従前の談合の内容を抜本的に改める必要があったばかりか、平成六年度の談合の際には、そこで合意した受注調整の方法が将来とも有効であるか否かについては明らかではなく、そのため、当面その年度の一年を通じて受注調整を試みることとして単年度を前提とする談合をしたものであって、その談合は、平成七年度以降も各被告会社を拘束することを予定していたものではなかったと認めるのが相当である。したがって、次の平成七年度の談合が行われたことによって別個の罪が成立するものというべきである。
もともと、平成三年に公正取引委員会に談合が発覚した以降、各被告会社は、それまでよりも一層極秘裡に協議をして当面の対策を立てることに追われていたばかりか、東京都の発注方法や指名業者等の新規参入等の見通しも定かではなかったのであるから、次年度以降についても各被告会社を拘束する談合を前年度の談合で成立させるのは困難であった。実際、平成六年度の談合はもとより、七年度の談合も、その年度を通じて受注調整をすることを内容とした当面の方策であって、八年度以降も見通して各被告会社を拘束することを予定した継続的な方策であったとは認められないのである。したがって、平成八年度の談合も、別個の罪を構成することになるというべきである。
このように、各年度の談合によりそれぞれ新たな不当な取引制限という法益侵害が生じているのであるから、各年度毎の罪は併合罪となると解するのが相当であり、全体を通じて包括一罪を構成するにとどまると解すべき特段の根拠はない。
(三) 本件の各談合の段階では未だ未遂罪が成立するにとどまるという主張に対して判断する。
3で認定した事実経過から明らかなとおり、本件の各談合は、各被告会社の合意により、それぞれの年度内における受注調整の方法を具体的に決定したものであって、その後は入札の際にこれを実施に移せば足りたのであるから、各談合により、公共の利益に反して競争が実質的に制限されたものと認めるのが相当であり、既遂罪が成立するというべきである。談合で決定したとおりに各被告会社がこれを順守していたのは、その明白な証左である。なお、一つの罪に含まれる相互拘束行為等の全体を訴因として掲げるか否かは、具体的事案における行為の性質等を考慮して検察官が決定すべき事項であって、常にその全体を訴因に掲げることを義務づけられるものではない。
二 違法性阻却事由等の主張について
1 主張の要点
一部の弁護人は、本件については違法性阻却事由又は期待不可能性事由があるとし、次のとおり主張する。
(一) 独占禁止法八九条一項一号の罪は、一定の取引分野における競争を実質的に制限することが「公共の利益に反する」場合に成立するところ(同法二条六項)、本件における談合は、中小企業者を保護するために行った行為であるから、違法性阻却を認めるべきである。すなわち、東京都発注の水道メーターは、従前中小企業者が一手に受注していたが、順次大企業者が受注に参入して受注を増大するようになったため、中小企業者の事業機会を確保することが必要となり、他方、大企業者参入により水道メーターの安定供給と品質を確保することも行政目的の実現にとって必要であるため、これら両方の要請を充たすために大企業者と中小企業者とが共同して本件談合を行ったものであり、大企業者にとっては、中小企業の保護法にいう「同種事業を営む中小企業者の利益を不当に侵害することのないよう配慮する」責務を具体化したものであり、中小企業者にとっても、「過度の競争を防止するための自主的な事業活動の調整」であって、国が実施すべき施策に代替するものである。しかも、それにより適正利潤を超える不正な利益を得ることもなかったのであるから、公共の利益に反せず、違法性を阻却するものと解すべきである(東京量水器工業所関係)。
(二) 東京都からの受注に依存する小規模企業者が、価格のみの競争にさらされれば、大規模事業者との競争に敗れることが必至であるから、代わるべき保護策がないまま、このような小規模事業者に対して談合への参加を拒んで自滅的な競争の道を選ぶことを期待することは、不可能であった(東京量水器工業所関係)。
2 主張に対する判断
(一) まず、違法性阻却事由が存在するという主張に対して判断する。
国又は地方公共団体における売買その他の契約には、大別して、国民の経済的利益ないしは負担、行政の目的達成の利益ないしは負担(結局はこれを通じた国民の利益ないしは負担)及び中小企業を含む事業関係者の利益ないしは負担の三つがかかわっている。したがって、これらの利益が対立する場合において、競争制限の罪の違法性等を判断するにあたっては、法令が認めている価値を中心とした法全体の趣旨によりそれらの利益等の優劣を判断してこれを行わなければならない。
独占禁止法は、事業活動の不当な拘束を排除することにより公正かつ自由な競争を促進することに法的な価値を認め、これを通じて右の三つの利益を守ることとしているが、本件のように事業関係者全員が談合に加わっている場合には、これを規制することによって主として国民の経済的利益を守るという役割を果たすことになる。また、会計法、地方自治法等は、契約の方法を規制し、競争による入札という方法に高い価値を与え、これによらない随意契約を厳格に制限しているが、本件のような場合には、独占禁止法と同様に、主として国民の経済的利益を守るという役割を果たすことになる。
他方、事業関係者の利益を守ることを主たる目的とする法令も存在する。所論が指摘する中小企業基本法もその一つであって、ここでは中小企業の成長発展等の目的を達成するため所定の事項について国は政策全般にわたり必要な施策を総合的に講じなければならず、その事項には中小企業の取引条件に関する不利を是正するように過度の競争の防止を図ることが含まれること(三条)、地方公共団体は国の施策に準じて施策を講ずるように努めなければならないこと(四条)、国は中小企業者が自主的に事業活動を調整して過度の競争を防止することができるようにその組織を整備するなどの施策を講ずるものとすること(一七条)などが定められている。
しかしながら、右の中小企業保護の施策は、国又は地方公共団体が講ずるものであって、事業関係者が代替して講ずべきものでないばかりか、それが前記の独占禁止法等が認めている法的価値に優越する場合に初めて、独占禁止法の罰則の適用にあたって違法性阻却事由の原由となるものである。そして、本件の談合は、中小企業を含む事業関係者全員が加わって競争制限を行ったものであって、中小企業の競争からの保護という側面もあったということができるが、水道メーターの入札価格を東京都の予定単価に近いものとすることを内容としている点で、すでに独占禁止法の価値を侵害して国民の経済的利益に反する危険を内包し、これに優越する立場を主張し得るものでないことが明らかであるから、違法性阻却を認めることはできない。なお、東京都は、一3で認定したとおり、水道メーターの入札を業者の規模に応じて行うなどして各業者に受注実績に応じた受注の機会を与え、中小企業の保護を図りつつ、その枠内で中小企業同士の競争を促進することとし、もって独占禁止法との調和を図っているのである。
(二) 次に期待可能性がなかった旨の主張に対して判断する。
大規模事業者が独占的な地位を悪用して違法な行為に及んだときは、独占禁止法その他の法令により制裁その他の措置が採られるのであり、他方、小規模事業者であっても、適正な自由競争の結果生じ得る結果は受忍して、その保護を許されている他の手段に求めるべきであり、そうすることは十分に可能であったから、小規模事業者が本件談合に加わらないことを期待することはできなかったとはいえない。
三 量刑の酌量事由の主張について
1 主張の要点
全弁護人は、本件については各種の酌量事由があると主張するが、それらに共通する主要なものは次のとおりである。
(一) 水道メーターは、計量法上、検定制度と有効期限の制約がある上、必要に応じて速やかに調達されなければならない公共性の高いものであるから、これが安定供給されることは、行政の重要な利益である。また、水道メーターの市場は、中小企業者が多く、価格のみの競争にさらされるときは寡占を招く危険性のある特殊市場であるから、その発注にあたっては、中小企業の保護にも十分に配慮しなければならない。そうした特殊性から、東京都は、従前いわゆる単価同調方式を採用し、年度初めの入札における最低価格をその年度の受注価格とし、これに異存のない指名業者等に実績等に応じて受注させることとし、水道メーターの事業者も、この方向に協力してきた。平成五年以降この方式が見直され、競争原理を重視した指名入札方式への移行が図られることになったが、右のような特殊性には変化はなく、企業者の意識改革も十分でなかったところから、本件行為に至ったものであって、この点は酌量に値する。
(二) 本件談合の主たる目的は、指名競争入札等の制度の下でも各被告会社の従前の受注割合を確保して共存を図ることにあり、入札価格の低落を防ぐことにはなく、実際にも入札により不当な利益は得ていない。本件発覚後水道メーターの落札価格は大きく下落しているが、これは従前の落札価格は不当な利益を含むものであることの証左となるものではなく、むしろ製品が在庫として長く抱えることができない特殊なものであり、しかも、本件の摘発により完全な自由競争にさらされたために企業者が採算を度外視して受注に走った結果とみるべきである。
2 主張に対する判断
(一) まず、製品及び市場の特殊性を基礎とする酌量事情の主張に対して判断する。
なるほど、水道メーターには製品としての特殊性がある。すなわち、水道メーターは、公共性の高い水道行政を遂行するのに必要不可欠であり、必要に応じて速やかに納入させなければならない上、東京都では年間八〇万個ないし九〇万個を必要とし、その不断の確保には複数事業者の協力が必要である。しかも、それは、計量法及び同法施行令により、新品の段階で検定を受けるほか八年毎に再検定を受けることを義務づけられていて長期の在庫に不向きな上、在庫設備にも限界があるため、必要に応じて発注して一月半位後に確実に納入させる方策を確立しておかなければならない。東京都が、水道メーターを「性質又は目的が競争入札に適しないもの」(地方自治法施行令一六七条の二第一項二号)にあたると判断し、平成五年まで大幅に競争原理を後退させた単価同調方式等の随意契約によって製品を買い入れていたのは、こうした特殊性を考慮した結果であった。このことは、本件においては、二2で判示した三つの利益のうち、水道メーターの安定供給を得るという行政上の利益が関係していることを意味しており、また、その利益を適正な範囲で確保するため、ある程度の競争の制限が許容されることを意味している。
しかし、その競争の制限がどこまで許容されるかについては、他に重要な考慮要素がある。その一は、競争の制限により国民が受ける経済的負担の増大である。水道メーターについて純粋の随意契約から単価同調方式に変更されたについては、東京都の予定単価の範囲内での自由競争により価格が低下することが期待されていたものと考えられるが、予定単価を予測することが難しくなかったことも影響し、実際には、談合により、それに極めて近い最低価格で落札されることになった。東京都による指名競争入札制度への移行は、このような弊害を防止するため、自由競争を促進し、国民の経済的負担の増大を押さえるためのものであるから、それをも排除しようとした本件談合について、これを水道メーターの安定供給の確保という観点から酌量することはできず、せいぜい永年にわたる随意契約の結果生じていた無競争の雰囲気と東京都の予定価格とほとんど差のない落札価格が続くことが問題視されてこなかった実情から、指名競争入札制度への移行に伴って当然必要であった意識の改革が遅れ、競争原理を最優先する時代の要請に対応し切れなかった面があることを考慮し得るにとどまる。
所論は、考慮要素の二として、水道メーターの市場の特殊性を挙げている。たしかに、水道メーターの市場には、大手の事業者もいる反面、中小事業者が多い。そして、規格品である水道メーターの競争は価格競争の性格を帯びることになるので、完全な自由競争にさらされると大手の事業者による寡占の危険も完全にこれを否定することはできないと思われる。東京都が平成五年まで維持していた随意契約又は単価同調方式には、こうした危険から中小事業者を保護する目的も含まれていたと考えられるのであり、平成六年度以降指名競争入札制度を導入しつつも、事業者の規模に応じてランク分けして入札を行うこととしたのも、中小事業者の保護に配慮したためであったと認められる。しかしながら、寡占の危険の防止は他の手段に期待するのが筋であるばかりか、事業者の同一ランクでの競争すら水道メーターの事業には適合しないというのも、説得的ではない。
(二) 次に、本件談合の目的と落札価格の評価についての主張に対して判断する。
本件談合は、指名競争入札等の下でも従前の各被告会社の受注割合を維持することを主要な目的の一つとしていたものと認められるが、同時に単価同調方式の下で確保されていた利益を維持することをも主要な目的としたものと認められるのであって、そのことは、談合の実施として行われた入札での落札価格が東京都の予定単価に極めて近いことからも裏付けられている。
もっとも、その落札価格が不当に高い利益を含むものであったか否かについては、正確に判断するに足りる資料は検察官からも提出されていない。本件談合の発覚を機に落札価格は急激に下落しているが、それが正常な競争の結果であるとみるのは酷であり、談合により各被告会社に対する社会的な非難が集中したばかりか、取引停止等の処分が課せられた厳しい状況下で、各被告会社が生き残りをかけるなどの特殊の考慮から採算を度外視した受注に走ったことも関係しているとみるのが公平であろう。現に、被告会社の中には、まったく受注ができなくなったり、解散を余儀なくされたものもある。
他方、本件当時の落札価格は、適正な自由競争の余地を残した東京都の予定単価とほぼ一致しているのであるから、それを適正な自由競争の下で決定されるはずであった価格と差がないとみるのも正当ではない。
(量刑の理由)
本件は、東京都の水道メーターの指名入札に参加していた全業者である被告会社が平成六年度から八年度までの三年間にわたり受注調整を行った事案であって、消費者保護のためにも、国際的な取引ルールの平準化のためにも、公正かつ自由な競争の確保が特に要請されている今日、強く非難されるべきである。
しかも、永年にわたり同様の受注調整を繰り返して平成三年一二月に一社を除く被告会社が公正取引委員会の立入検査を受け、平成五年一月には審決まで受けたにもかかわらず、その直後から全被告会社が談合を続けたものであるから、犯情は悪質である。
さらに、その結果、東京都の予定価格とほとんど差のない落札価格が維持され、自由な入札が行われた場合にそれより低い落札価格になる可能性が奪われたことも、看過することはできない。
他方、水道メーターについては、安定供給を確保する必要性が高いという観点などから、永年にわたり随意契約が行われてきた結果、無競争の雰囲気が生じるとともに、右のような落札価格が続くことが問題視されず、ために指名競争入札制度への移行に伴って当然必要とされた業者の意識の変革が遅れて競争原理を最優先する時代の要請に対応し切れなかった面があることも考慮すべきであろう。
こうした事情のほか、被告会社については、本件において果たした各被告会社の役割及び審決の対象会社であったか否かの区別を考慮し、営業実務責任者であった各被告人については、果たした役割及び関与した談合の回数を考慮し、さらに、各被告会社については、その非を認め、社内処分及び再発防止策を行っていること、各被告人においては、たまたまその役職にあったため談合に加わらざるを得なかったこと、摘発当初から自己の刑責を素直に認めて反省の情が顕著であることを考慮し、量刑を行った次第である。
(裁判長裁判官 香城敏麿 裁判官 松浦繁 裁判官 平谷正弘 裁判官 佐藤公美 裁判官 樋口裕晃)